タイミングチャートを書いてみよう(エクセルデータ付)

タイミングチャートを書くためのエクセル表とグラフ ファクトリーオートメーション

タクトタイムの明確化

自動化のタクトタイム(ピッチタイム)目標を明確に定義しましょう。
タクトタイムの目標値が変更された場合、設備の大きな変更が必要となります。
タクトタイムは、設備の生産能力そのものであり、投資の収益性を決定する重要な要素なりますので、慎重に検討する必要があります。
また、自動化設備の設計時、各ユニットのタクトバランスを整えることが、重要な要素の一つとなります。

動作やタスク洗い出し

加工箇所のタクトを明確にしましょう。加工とは、組立、溶着、圧入、穴あけ、ねじ締めなど、搬送以外のボトルネックとなる分解可能な最小要素のタクトの確認が必要です。
場合によっては目標としている全体サイクルのタクトタイムの2倍以上など大きな差異が見込まれる場合は、並列処理、つまり、ユニット数を2つ以上設置する必要となります。
つまり、装置構成に大きな影響を与えるため、事前実験を実施しする必要があります。
ボトルネックの行程の短タクト化が実施できると、ユニット数が減少し、初期投資の抑制につながり、商品の競争力が上がる場合が高いと考えます。

タスク所要時間の見積

過去のデータや技術計算を実施し見積もりを行います。
アクチュエータについては各メーカのタクト算出用の計算ソフトを参考に実施できます。
計算する際は、基本的な静的および動的負荷だけでなく、動作回数に依存する寿命も重要な項目になります。
その他にも、交換の容易さや、初期費用のバランスを見て見積もりましょう。
基本的には各機器のMAX能力の70%~80%程度でアクチュエータの能力は見込んでおきましょう。詳細になっていくと、想定外の動作や待ちが発生する場合があります。
私は、費用面に大きな差がでない範囲で、仕様上に余裕をもったアクチュエータを選択しておきます。

参考に私が全体サイクルを確認する際、簡易計算で使用しているエクセルを添付させていただきます。次に引き続き詳細を記載させていただきます。

タイミングチャート(excel簡易計算)
Size: 29キロバイト
Version: V1.0
Published: 2023年11月18日
タイミングチャートを書くためのエクセル表とグラフ

エクセルを使ってのサイクルタイムの算出

上記の図面をもとに整理していきます。
スタートボタンが押されてからの動作をイメージします左側の欄は、コントローラからの指令のみの動作を考えて作っています。
構成を
横手前の動作軸は電動アクチュエータ、縦軸の動作軸(上下軸)はシリンダ、部品把持:シリンダによる平行チャックとしてます。

次にアクチュエータの動作完了のためのセンサーの種類を書いていきます。

・電動アクチュエータ:コントローラからの完了信号(横手前のアクチュエータ)
・シリンダはオートスイッチ(把持と上下)

動作軸とそれぞれの動作完了の信号トリガが決定したら次に各動作の概算タクトを記載してきます。
電動アクチュエータは、エクセルデータ内の、加減速度、移動量、最高速度などを入力していくと、自動でタクトが計算できるように記載されています。
これで、各ユニットのタクトを算出できたので、数値を合計して、装置のサイクルタイムを出すことができます。

設備機器の一般的な構成概要の関係は、下記を参考にしてください。

タイミングチャートの作成

先ほど作成した簡易タクト計算をもとにタイミングチャートを記載していきます。
タイミングチャートをもとに、PLCへのラダー設計、製造調整が実施されます。
チャートには、アクチュエータの速度、加減速など、各機器の設定値などを書きましょう。
ラダー設計は、I/O信号をトリガー
として、次の動作を定義します。

  • モータなどエンコーダ付きのアクチュエータであれば、目標位置近傍になった際に、モータドライバーなどから出力される位置決め完了信号(位置決め幅があるので、完全に停止しているとは限らない)
  • シリンダーであればオートスイッチ(応差やセンサONにの感知範囲がある)ため、アクチュエータの動作が停止している=タイミングチャート上の信号出力と一致していないことは、十分に注意しましょう。
  • 光電センサ、近接センサ、フォトマイクロセンサなど一般的にはどのセンサもチャタリングなどの予期せぬON信号がある場合があるため、少なくとも一般的には50ミリ秒程度は、ONタイマーなどを設けるため、適当な動作余裕時間を設けておくことが重要です。

全体動作を並べて、余裕が多いユニットと余裕が少ないユニットをバランスよく並べると、設備立ち上げがスムーズに実施されると思います。一般的に加工(溶着、接着、切削、塗布)など重要な工程の前後の搬送用のユニットには、20~30%程度の余裕時間を設計上取っておくと、立ち上げがスムーズになります。変化する可能性あるリスクの高いユニットに設計、調整、立ち上げなどのリソースを集中できるようにしておきましょう。

タイミングの調整

実設計を進める中で変化した内容を反映しましょう。場合によっては、各軸の動作完了を待たずに動作をオーバラップなどをする必要性があるかもしれません。余裕度がなければ、オーバラップ可能なように、アクチュエータの位置決め停止信号を待たずに、センサでアクチュエータの位置を検知する方法もありますので、設置可能なように、スペースなどを事前にとっておきましょう。

寿命計算

各アクチュエータには、設計上の最短タクトが動作頻度や稼働予定年数から寿命を見積もることができると思います。私は、7,8年程度は動作すれば十分として、設計することが多いです。
寿命計算の際、加速減速時間より、最大負荷力や使用アクチュエータを決定します。

移動距離と加速減度から最高速度などを求める簡易的に確認できる計算ソフトを作りましたので、移動距離から最高速度などを求めるのにご利用ください。

更新と共有

設備のDRなどで、過去の経験者から、動作タクトについては、十分なヒアリングを実施しましょう。滑り安い物体を把持して、加減度があげられない場合、特殊な動きをしないと組付けられない、同時に動くことになり、ユニット同士が干渉してしまうなど、予期していない内容を指摘いただけることがあると思います。

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